株式会社想画
2025.2.26UP
■取組ポイント
従業員のやる気を引き出すことと「システム開発」という事業内容に沿って整備された、最適な勤務体制と評価制度を実践
AIや画像処理等のシステム開発を手掛ける株式会社想画。
コロナ禍を経て固定オフィスを廃止し、フルリモートワークに転換。独自の評価制度や休暇制度を設け、すべての従業員が働きやすい環境の整備を模索し実践してきました。
代表取締役の田中統蔵さんに、ユニークな取組に至った経緯や思いについてお話を伺いました。
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田中統蔵さん
株式会社想画
住所:東京都千代田区九段南一丁目5番6号りそな九段ビル5階KSフロア
業種:情報通信業
事業内容: AIや画像処理等のシステム開発
HP:https://www.sohga.jp/
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- 残業の少ない働き方の実現
- サステナブルな働き方・くらし方の普及
- 休暇を取りやすい働き方の実現
- 多様な働き方の実現
- テレワークの推進
- 副業・兼業の推進
- 働く人が能力を生かせる賃金・処遇制度の実現
- 高齢者の就業促進
エンジニアとしての経験から生まれた「値付け」制度
―従業員のモチベーションを上げる独自の評価制度を導入されているそうですね。
この制度を整備するにあたり、旧来の評価制度に対してどのような問題意識があったのでしょうか。
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システム開発業は労働時間と生産性が比例しない業種であると認識しています。技術力が高ければ短い時間で仕事を終えられますが、生産性が高い人も低い人も同じ労働時間なら同じ給与になるような旧来の評価制度では、エンジニアを正当に評価するのは難しいと、私自身もエンジニアとして働いてきた経験の中で感じていました。そこで創業時からどういう評価制度であれば従業員のモチベーションを保つことができるかを考えました。
労働時間に応じた給与を支払うことは労働基準法に則して変わりませんが、生産性の高い人ほど昇給できるよう、全従業員が自分の生み出した成果物に対してその価値を考え、値段をつけています。その価値を労働時間で割ったものが生産性になるため、AさんとBさんの成果物が同じならより短い時間で生み出した人の方が高い生産性となります。コスト計算は多くの会社で行われていますが、従業員一人一人が自分で価値を計算する会社は珍しいのではないでしょうか。 この評価制度を運用する際の工夫として、まず自分の出した成果に対し、過小評価しないようにと伝えています。その上で、過去の同様事例と比較をし、納品先の顧客が納得する価値を提供できているどうかを上長と議論する場を設けることで、この制度の合理性を担保できるよう意識しています。また、日報業務や業務上必要な調査などの生産性での評価にそぐわない業務は査定対象外項目とすることで、評価を気にすることなく取り組めるようにしました。
コロナ禍をきっかけにフルリモートワークへ
―固定のオフィスを廃止しフルリモートワークに完全に転換されたとのことでしたが。
工場や店舗などを持たないシステム開発業ですから、もともとリモートワークをしやすい環境ではありました。また、両親が高齢のため地元に戻り、フルリモートワークを始めていた従業員の例もありました。コロナ禍に入り、顧客もリモート打ち合わせを希望していたことから、全従業員がフルリモート体制に移行しても目立った不都合はありませんでした。従業員同士のコミュニケーションに関してはいくつか工夫を要する場面はありますが、通勤がなく住む場所を問わない体制になることで、家庭環境が変わっても継続して働け、優秀な人材を採用できた実例を鑑みると、弊社においてはメリットの方が大きいと感じます。
ただ、従業員研修については非対面形式のやりづらさを感じます。たまたま弊社では業態的に未経験者が参入しづらい高度な分野を取り扱っているため、現状ではそこまで困る場面はないのですが、フルリモート環境において、より多様なコミュニケーションが必要とされる新規人材確保や従業員の育成という面は今後の課題ですね。
育児期間中は時間もお金もかかる!
会社全体で子どもを育てる意識を大切に
―子育て世代も多く活躍されているとのことでしたが、育児中の従業員のサポート体制で特に工夫されている点はありますか。
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特別休暇、特に子の看護休暇を毎月48時間まで認め、対象を子どもだけでなく保護者にまで拡大するなど、法定の看護休暇を超えて手厚く整備しました。
特別休暇については、育児中の従業員からのヒアリングや私自身の実体験を踏まえて導入に至りました。育児中は労働時間の確保が難しくなる反面、どうしてもお金のかかる時期ですから収入は減らしたくないというジレンマに陥りがちです。そこで、時間単位で取得できる特別休暇を設けました。また、子どもが風邪などで体調を崩すと、看病する親も体調を崩すケースが多いと思います。そうなると、パートナーや子どものケアにあたるために仕事を休まざるを得なくなりますから、保護者も対象に含めました。
弊社が子育て世代への支援に力を入れているのは、子どもたちは未来のお客様や従業員になるかもしれないという視点を大切にしているからです。子育てをしていない従業員にとっても、未来への投資という面でメリットがあるということを前提に置いて制度設計をしました。そして、試用期間を設け効果を検証した上で制度化に至りました。
今後描く未来~事業戦略としての「働き方改革」
―今後取り組んでいきたい現状の課題や、チャレンジしていきたいことはありますか?
新規人材確保に向けた課題解決に必要な戦略がまさに「未来の働き方」を考えることだと感じています。今回、「東京サステナブルワーク企業」への登録に取り組んだこともその一環です。
弊社事業をさらに拡大していくにあたり、今あるエンジニア中心のスキルセットでは足りないことが分かってきました。プランニングやマーケティング、プロモーションなどの経験を持つ人材の確保が必要になってきたのです。
この業界に興味があるけれど未経験なので二の足を踏んでいるという方に「やってみよう」と思ってもらえる環境――つまり、ライフステージや住む場所、働ける時間、状況が変わっても仕事を続けられるような仕組みづくりを積極的に行うことが、採用面において弊社の魅力を高めることに繋がると考えています。今後さらに様々な事業に挑戦することで、職種が拡がり、多様な人材が参画できるという好循環が生まれるはずです。
―最後に、よりよい職場環境の整備に向けて取り組んでいる企業へのメッセージをお願いします。
「働き方改革」というと、従業員の働く環境を改善しようというところから始めようと思いがちです。ただ、実体験として感じるのは、事業や経営をよりよくしたい思いからのスタートでもその手段として働き方の改善が効果的な場合があります。つまり、働き方改革は事業や経営にもメリットをもたらすものなのです。
また、弊社が行ってきた取組の中では、特に評価制度を意識したのがよかったと思いました。働き方だけにフォーカスしてしまうと、従来通りバリバリ働きたい方を置き去りにしてしまう恐れがあります。すべての従業員を正しく評価できる制度、事業や評価の連動性を考慮した評価制度の設計を行うことで、経営的にも持続可能な循環が描けると感じています。
―ありがとうございました。
インタビューを終えて
特に評価制度や特別休暇については、先進的な取組で大変興味深かったですね。エンジニアとしてのご経験や子育てしたご経験を踏まえ、従業員とのコミュニケーションを大切に制度設計されてきたことが伺えました。